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じんわりじわじわが一番 2 最下位層からの成長の軌跡

それでは今日は、いい感じでじんわりじわじわ成長しているA君についてお話しします。

A君が体験授業で来てくれたとき、順位がとても低く、そして話すことが苦手で自分がどこがわからないのか口で表現できなかったので、この塾でやっていくのは難しいかもしれないなと正直思っていました。お母さんも、断られるだろうと思っていたそうです。

でも体験授業の終わりがけに違和感がありました。順位が低いにも関わらず、計算式がお手本のようにきれいだったのです。ふつう順位が低い子は途中計算がぐちゃぐちゃして、何をどう考えたのか読み取りづらいことが多いのですが、A君はそんなことがなかった。

そして、素直でした。私のアドバイスは受け入れてすぐに反映させていきました。これはうちでも伸ばしてあげられるかもしれない、途中からそう思っていました。

入塾してからは、初めのテストで順位がぽんと上がりました。「うれしいかな・・・」そう言ってくれました。喜怒哀楽を表に出す子ではありませんが、喜んでいるのは伝わってきました。

はじめはうまくいったのですが、そこからは足踏みが続きました。そこから上がっていかないのです。私はその原因はわかっていました。国語です。国語が足を引っ張っているのは明白だったので、ちょくちょく「国語やろっか」と声をかけました。

声をかけると「はい」と答えるのですが、国語の勉強ができないのです。これは「うるせえなあ。国語なんかやってられるか!」という態度ではなくて、他の科目ができるようになって、勉強が楽しくなって苦手な国語に注意がまわらない、そんな感じ。これは順位が低い子が上がっていく過程でよくあることなので、「ま、いっか」と私も気にしないようにしました。存分に英語や数学などを勉強してくれればいい、そう思っていました。

そりゃ20点だったものが60点、70点と取れるようになったら勉強は楽しいでしょう。私もその気持ちはよくわかります。

この足踏みの状態が定期テスト3回分続きます。6か月間です。

足踏みが始まって3回目のテストは国語はだめでしたが他の科目がぐんと伸びてきて10番くらい上がりました。私はここはチャンスだぞと思い「A君ならもう少し上にいくと思うんだけど、どうしたらいいと思う?」と尋ねました。そしたら「国語がだめなので、国語をやらなきゃ」と自分の口で言ってくれました。これなら次のテストは国語に意識が向くだろうと思って私も積極的に国語で関わるようにしました。

そしたら当たり前ですが、また順位がぽんと上がりました。

100点だったのが、200点を超えて、300点を超えてきました。「次は400点だね」というと「少しずつ上がっていければ」と答えてくれます。じんわりじわじわいい感じです。

塾での様子も変わってきて、初めは質問はせず、こちらから定期的に声をかけなきゃいけませんでした。次はキョロキョロしてくれるようになりました。これはわからないから教えての合図です。そして次は「先生」と手を上げて呼んでくれるようになりました。

そしておととい、初めて授業後に、今日の授業の振り返りとして反省点・感想を長文で書いてくれました。ファイルをみていて私はお!と思わず声をあげてしまいました。初コメントです。初コメントをもらえるのに1年以上かかりました。1年物の初コメントです(笑)こういう変化もじんわりじわじわいい感じです。

こうやって進化していけたのはA君の力が大きかったですが、他にお母さん、お父さんの存在も大きかったと感じています。順位が停滞していた3回のテストでは「お母さん、お父さんはなんて言ってる?」と私は尋ねていました。そのたびに「よくがんばったね、といってくれてます」と返ってきました。

普通はこの停滞が耐えられないと思います。はじめは上がってよかったと思うと思いますが、人には欲があるので、それならもう少し上にいけるかなって思うもの。3回も停滞したら小言の一つぐらい言いたくなるものです。でもこのご両親は「すごいじゃん、がんばったね」としか言わなかったみたいです。(A君からの伝聞なので本当は知らないですよ(笑))でもA君に「A君のお母さんとお父さんはとても素敵な方で幸せだね」というと「はい!」とA君には珍しく強く答えてくれます。

お母さん、お父さん、いつもA君を支えてくださって本当にありがとうございます。

A君はここまで変化するのに1年かかっています。これを早いととるのか遅いととるのかは人によって変わると思いますが、私は早いほうだと思っています。今15歳だったとしたら、今持っている価値観、考え方ができるまでに15年間の現実を体験してきたわけですから、それを変えようと思ったら、数年はかかると考えるのが普通です。A君は素直だったから変化がはやかっただけで。

もし、「勉強つまんねー、遊び最高!」て思っている子がいて、その子に対して、たとえば私が「将来幸せな生活を送るためにはいい企業に勤めなきゃいけないよ。そのためにはいい大学にいかなきゃいけないし、いい高校にもいかなきゃいけない。だとしたら今変わらなきゃいけないんじゃない?」(注:私はこういった考えはしていません)といったとして「はい、先生の言う通りですね。これからは勉強がんばります!!」ってなりますかね。ならないですよね。

まずならないし、もし頑張ります!という子がいたら、私はそれを信じないし、逆にこの子は変化するのに相当な時間が必要だなと判断します。

人に急成長はないと思います(あるけど、ない)。そう考えて、じんわりじわじわやっていきます。

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